士族の苗字と、先祖の調べ方一覧
「士族(しぞく)」という言葉があります。
知名度の低い言葉だと思うのですが、個人的には意外に知られている言葉のように思います。
「士族」とは、明治時代に設けられた身分制度です。
明治維新によって、江戸時代の支配階層だった武家階層が、解体されていく過程で、生じた身分のことと理解されて良いかと思います。
士族の特権は?
明治維新によって、武士の特権はことごとく奪われました。
苗字の公称は庶民にも認められました。
武士だったものにとって、一番困ったのが、生計を立てていく術(すべ)が失われたことです。
当初は、職を奪われた代わりに、給付金を与えられましたが、やがてそれも廃されます。
結局、武士にとって、明治維新を経たあとに残った特権は何もありませんでした。
戦前を通じて特権階級だったのは皇族と華族のみであり、士族は平民と同様に扱われ、何の特権も得られなかったのです。
士族は、現在もあるのか?
したがって、士族という身分は、これまで特権的な地位を占めてきた武士たちの、プライドを満たすためだけに存在したと考えても良いでしょう。
終戦を経て、日本国憲法の成立にともない、士族という身分も廃されました。
ということで、現在は、士族という身分はありません。
しかし、士族といった言葉に、名誉的な意味合いは現代においても、わずかながら残っていると思います。
先祖が士族であることは、自慢になるのか?
戦前生まれの世代であれば、「ウチは士族の家柄で…」などと、自慢げに語る方もいます。
また、家系調査をしている人にも「先祖が士族だったのかどうかを知りたい」という方がいます。
こうした事実が示すのは、現代においても「元武士」、「元士族」であることが、名誉的な意味合いを持つことを示しているのだと思われます。
士族の苗字一覧のようなものがある?
はじめに書いておきますが、苗字で先祖が士族かどうかわかるなんてことは、ほぼありません。
ネットで自分の苗字を検索して、「士族の苗字一覧」のようなページがあって、そこに苗字がれば、士族で、そうでなければ士族ではない、なんてことはありません。
「佐藤」という苗字だから、先祖は士族だとか、「鈴木」という苗字だから、先祖は士族ではない、などといったことはないのです。
苗字から、先祖の身分を特定することは、ほとんど不可能なのです。
参照記事
苗字と先祖の身分との関係は?
先祖が士族かどうか知りたい人の、調査方法一覧
さて、前置きが長くなりましたが、先祖が士族かどうか知りたいという人の要望に応えましょう。
具体的に先祖が士族であったことを調べる方法について、書いていきたいと思います。
・金禄公債証書に関する書類
金禄公債(きんろくこうさい)とは、明治維新によって俸禄を失った、武士たちへの救済措置として給付されたものです。
金禄公債を受け取っているものは士族なので、それが分かれば、士族であることが証明されるわけです。
・士族の名簿
これも、各県で作られておりました。
理由は、前記の金禄公債の発行などの事務管理上、士族を正確に把握しておく必要があったので、こうしたものを作成したのです。
・卒業証書
戦前においては、卒業証書に族称が書かれておりましたので、こちらを見れば、判明します。
以上のどれをあたるにしても、ご先祖が住んでいた場所に行って、現地調査をする必要があります。
主に行政機関が保有していると思われます。
卒業証書なら、古い家ならどこかに眠っているのかもしれませんが、史料館などに寄贈されている場合もあります。
具体的に、どこにこうした資料があるのかは、それぞれの地域によって、異なります。
参照記事
士族の意味と、現在の子孫