戦前の戸籍用語
古い戸籍を見ていると、よくわからない用語に出くわすことがあると思います。
現代では用いられない旧民法によるものなので、一読しただけでは意味を解するのが難しいです。
こちらの記事では古い戸籍に出てくる用語を解説しています。
戸主
戸籍の筆頭者である、一家の代表者を「戸主」と呼びます。
現在では夫婦を基礎とした単位の戸籍ですが、戦前においては、「家」を単位としていました。
現在の戸籍筆頭者や世帯主には、特にこれといった権限があるわけではありません。
それに対して、戸主は、一家の構成員に対して絶大な権限を持ちました。
一家の構成員の結婚や養子縁組、分家といった要件については、戸主の同意を必要としました。
民法上では「戸主」と呼ばれますが、「家長」や「家父長」といった言葉も同じ意味で用いられます。
戸主になるのは通常、男性です。しかし、夫や継承者となる子どもがいない場合には、女性が戸主となることもあります。
これは「女戸主」と言われます。
参照記事
女戸主について
前戸主
前の戸主のことを示します。
多くの場合、戸主の父か養父、あるいは兄、祖父といった続柄にあたります。
廃嫡
旧民法で、被相続人の意志に基づいて推定相続人の家督相続権をなくすこと。
分家
戸主の同意を得て、従前の家から去り、一家を創立すること。
民法上ではこのように定義されますが、実際にはいろいろな種類の分家がありました。
参照記事
戸籍上に見る分家と、その種類
一家創立
あらたに戸主になる者の意思とは無関係に、民法上の規定によって家が創立されること。
例をあげれば、父母が不明である場合や外国人が帰化した場合など、本人の意思とは関係なく家が創立され戸主となりました。
廃家(はいか・はいけ)
戸主が、結婚や養子縁組などにより他の家に入るために、もとの家を消滅させることを指します。
分家や一家創立によって戸主になったのであれば、任意で廃家することができましたが、家督相続によって戸主となった者が廃家する場合は、裁判所の許可が必要でした。
絶家(ぜっけ)
その戸籍の構成員すべてが、除籍されて後を継ぐ者がいなくなった場合に生じます。
廃家が戸主の意志によるものであるのに対し、絶家はそうではありません。
廃絶家再興(はいぜつけさいこう)
既に廃家や絶家した家を、縁者などが戸主となって家を再興すること。
参照記事
明治時代の改姓・廃絶家再興と複姓
家制度とは