武士の家系調査も簡単ではない
一般的に、先祖が武士であれば、農民や町人といった家系を調べるよりも、簡単だと言われています。
その理由は、武士のほうが、農民・町人よりも、多くの記録が残っているからです。
武士の家系調査であれば、まず分限帳をあたります。
また、家系図がどこかに残っている場合もあります。
武士は、藩に家系図を提出していたので、それが見つかれば、一気に先祖が判明するわけです。
参照記事
分限帳調査
武士の家系図を調べる
武士の先祖調べの難しい点
しかし実際は、武士の家系調査もそれなりに難しいです。
まず困るのが、分限帳に記されている名前と、戸籍に記されている名前が一致しないケースが多いことがあげられます。
武士は、通称名と実名を持っていたからです。
例えば、「中村七右衛門利弘」という名前の武士であれば、「七右衛門」が通称名で、「利弘」が実名です。
昔は、他の人を実名で呼ぶのは失礼なこととされていました。
したがって、分限帳には「中村七右衛門」と通称名で記載されることになります。
分限帳と戸籍の名前が一致しない理由
しかし、明治初期に戸籍に登録する際には、通称名を登録しているケースと、実名を登録しているケースがあります。実名で登録していた場合、「中村利弘」と戸籍に書かれているのです。
そうなると、分限帳に見られる「中村七右衛門」が、戸籍に見られる「中村利弘」と同一人物だと分からずに、見落としてしまうこともあります。
こういったことに注意しながら、分限帳調査を進めなければなりません。
参照記事
江戸時代の武士の名前
藩士の家系図集があれば…
また、藩の資料で、家臣の家系図をまとめていることもあります。自分の家系が、こうした系図集に収録されていれば、言うことなしです。
しかし、こうした藩の系図集が、すべての藩士のものを網羅しているかというと、そうでもないようです。
分限帳でもそうですが、上級武士のものしか扱っていないことも多いです。
参照記事
江戸時代における武士の階級
下級武士の家系調査はそれなりに難しい
上級武士の家系であれば、比較的簡単に家系調査が進むでしょうが、先祖が下級武士であった場合には、それなりに難しい調査になると思います。
確かに武士の家系であれば、農民や町人の家系よりかは調べやすい傾向にある、とは言えます。
しかし、それなりに難しいというのが実際のところです。