戦前における分割相続は可能だった?

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satake5 / Pixabay

明治・大正・昭和時代の旧民法と、分割相続

戸籍から読み取れるのは、出生年月日や血縁関係だけではありません。
確かに、戸籍に書かれている文面を読んでいるだけでは、そこから読み取れるのは、出生年月日や血縁関係といったことだけです。
「行間を読む」という表現がありますが、戸籍の行間を読むと、実にいろいろな事が分かるのです。

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戦前の家督相続について

戦前の家督相続においては、長男が相続するものでした。家督相続の際には、戸主権と財産が受け継がれます。
通常の場合では、長男が戸主となり、財産を単独相続します。

しかし、戸主権はともかく、事実上、財産を分割相続したケースは多いです。
例えば、二男に土地を分けて分家させれば、財産を付与できるので、戸主権は長男に移行させても、財産に関しては、事実上の分割相続をさせることができます。

また、家督は長男に譲るけれども、財産はすべて二男に相続させるケースもあります。
地方の農家で、長男が東京に出て官僚になり、二男が家を守っているといったようなケースです。
こうした場合だと、二男が分家して、すべての財産を付与され、かつ親の面倒も見るような感じになります。

あるいは親が二男以下の兄弟を連れて分家する「隠居分家」が行われることもあります。
事実上、二男が家を継ぐような形になるのですが、法制度との関係もあって、このような体裁をとります

参照リンク
戸籍上に見る分家と、その種類

廃嫡という制度もあるが…

旧民法では長男が家を継ぐことが前提となっているために、長男以外のものを家督継承者にするには、長男を「廃嫡(はいちゃく)」しなくてはなりませんでした。

「廃嫡」というのは、家督継承者としての地位を消失させることをいいます。
廃嫡するには、いろいろな要件が定められていましたが、「廃嫡」という言葉自体にマイナスのイメージがあるためか、実際にこうした措置がとられることは、そう多くありません。

その代わりに、二男に分家させて、そちらに財産を付与して事実上の家督継承者にするという方法がとられたのです。
もちろん、この場合では戸籍上は長男が家督を相続することになります。

戸籍の行間を読んでみよう

こういったケースは、戸籍を丹念に見れば読み取れます。
長男が家督相続しているのにも関わらず、その子どもがすべて本籍地以外で出生しているとしましょう。

こうした場合、長男は本籍地に住んでいないものと思われます。つまり本家を継いでいないわけです。
また、転籍している場合にも同様のことが考えられます。

そういった場合は、二男が事実上の家督継承者になっているのではないかと考えてみましょう。
こうした作業を繰り返し、本家を探り当てたり、戦前の家族関係の分析に役立てることができるのです。
これはまさに、戸籍の行間を読む作業と言えます。

上記の分析は、ほんの一例です。丹念に戸籍を読み込めば、実に多くのことが分かるようになっているのです!

こうした作業は、かなりの専門的な知識が必要とされます。

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