戦前の士族という身分
「士族」という言葉は、現在でも意外とよく使われます。
「武士の子孫」とか「士族」であるということは、現在でも誇らしいこととして考える方もいますね。
「士族」は明治時代にもうけられた族称(ぞくしょう)の一つです。
戦前における身分を示す言葉として理解しましょう。
全国民の約5%ほどが士族でした。
元武士の家系は、士族になっていると考えられるのですが、必ずしもそうでないケースもあります。
武士であっても、士族になっていなかったり、逆に武士でなくても、士族になっているケースもあります。
そういった例外的なケースについては以下の記事を参照してください。
参照記事
武士の家系なのに士族になっていない!?族称・族籍の調べ方
士族と職業
明治時代の士族は、版籍奉還によって、職を奪われてしまいました。
給付金が一時期、支給されましたが、他に職を探す必要が出てきました。
明治時代であれば、官吏・軍人・教員のほとんどは士族です。
こうした公職につけたものは、士族のなかでも勝ち組と言えます。
戦前日本の中流階級を形成
また、士族の家庭では教育意識が高く、大学や専門学校に進むものも多くいました。
大学や専門学校を出ると、官吏・軍人・教員・会社員といった仕事に就くことになります。
こうした職業は、戦前の日本において中流階級を形成していくことになります。
中流階級が、新しいライフスタイルを生み出したのは、以前書いた記事でも触れました。
参照記事
戦前日本の中産階級(中流階級)について
士族に身分的特権は無し
士族は確かに、戦前の制度下では平民とは区別された階級でした。
しかしながら、その身分的特権といえるものはありませんでした。
したがって、その階級を維持することは困難でした。
文官高等試験行政科の合格者の推移を見ると、明治時代初期は士族の割合が、平民よりも高いですが、時代をくだるにつれて、士族の割合は減っていきます。
現在、先祖が士族かどうか調べる方法は?
現在、自分の家が士族かどうか確かめる方法は、そう簡単なものではありません。
戸籍に記載されていたので、戦前の戸籍を閲覧すれば確認できたのですが、現在ではこうした記載は塗抹作業が施されているために、確認できません。
自分が士族の子孫であるかどうか知りたいのであれば、戸籍調査だけではなく、もっと総合的な調査が必要となります。
参照記事
武士の先祖の調べ方
士族の子孫と、現在の生活
とはいえ、士族の子孫であれば、現在でも特別な暮らしをしているのではないか、と思われる方もいるかもしれません。
これについては、完全に否定できると思います。
仮に、先祖のおかげで教育水準が高かったり、収入が多かったりということがあるかもしれませんが、それは「士族だった」という理由からではないでしょう。
「戦前の官僚の家系」だったとか、そういった別の理由によるものであると考えられると思います。