明治・大正・昭和戦前期の給料は?庶民の平均は?軍人・官僚・警察・総理大臣の給料を比較!『坊っちゃん』の給与は高い?
夏目漱石の『坊っちゃん』は松山の中学校を舞台にした小説です。
誰でも一度は、学校の課題図書などで、読んだことがあると思います。
主人公は、中学校の先生です。
これを、現代の中学校の先生のような感覚で捉えてしまうと、うまく作品のイメージに溶け込めなくなります。
その理由は、『坊っちゃん』の舞台となる「中学校」は、五年制の旧制中学のことだからです。
旧制中学への進学率は、現代の大学進学率よりも遥かに低く、裕福な家庭の子どもたちしか通えなかったのです。
旧制中学とは?
戦前においては、中学を出れば、高学歴者であり、将来高収入を得ることが、約束されていたのでした。
そうなると、当然中学校の教員というのも、現代の大学教授以上のステータスがあったと考えることができます。
卑近な例をしめすと、『坊っちゃん』は『3年B組金八先生』とはまるで違う世界である、と言えます。
“金八先生”が下町の学校で不良生徒を見捨てずに、親身になって善導する、庶民的な先生だとすれば、“坊っちゃん”は毛並みの良い、将来有望な生徒たちに、難しい学問を教える高慢ちきなインテリ教師ということになります(笑)
明治時代~戦前の、軍人・官僚・総理大臣・サラリーマンの給料は高い!庶民の給料との格差は?
一般的に戦前の日本においては、軍人・官僚・教員・サラリーマンといった職業の社会的地位が現代よりも格段に高かったのです。
お給料にも、それが表れています。
戦前の各職業の大まかな年収を紹介しましょう。
明治40年(1907年)のものです。
当時の貨幣価値を、現在のそれに換算すると、だいたい10000倍になります。
したがって「~円」の前に万とつければ、現代の貨幣価値に換算した金額になります。
・政治家/官僚
総理大臣
9600円
大臣
6000円
全権大使
5000円
次官、大審院長、検事総長
4500円
局長、全権公使、警視総監、知事
4000円
事務官、一等郵便局長、衆議院議員
2000円
警視、判事、税務局長
1500円
警部
500円
巡査部長
250円
町長、村長
200円
巡査
150円
・軍人
大将
6000円
中将
4000円
少将
3300円
大佐
2500円
中佐
1900円
少佐
1300円
大尉
960円
中尉
600円
少尉
440円
准尉
400円
曹長
300円
軍曹
200円
伍長
150円
・教師
大学総長
4000円
高等学校長、専門学校長
3000円
大学・高校・専門学校教授、中学・高等女学校長
1500円
中学教諭、高等小学校長
500円
尋常小学校長
400円
小学校訓導
200円
・民間企業/一般職/その他
三井家理事
29400円
住友家理事、鴻池家理事、三菱財閥重役
9793円
日本銀行総裁、第一銀行頭取
6000円
日本鉄道社長、勧業銀行総裁
4000円
興業銀行頭取、三井物産重役、上等俳優、上等力士
3500円
弁護士、医師
1700円
ホテル料理長、新聞記者、上等音楽家、一等芸妓
600円
西洋料理人、ペンキ屋、脚本家、薬剤師、産婆
350円
料理人、大工、左官、植木屋、床屋、看護婦
200円
牛乳配達、新聞配達、小作人
120円
風呂屋の三助、饅頭屋出前持
20円
収入の格差が激しいですね。
当時は多くの人たちが、農業や漁業、商業などに従事していました。
スーツを着て電車に乗って会社に通勤し、給料を貰う“サラリーマン”という人たちはとても少なかったのです。
サラリーマンが一般化するのは戦後になってからのことです。
戦前のサラリーマンは、官僚と同じくらい高給取りです。
一方で、庶民の代表的職業といえば、「小作人」でしたが、給料は年間で120円ほどです。
ちなみに、『坊っちゃん』は明治39年(1906年)に発表された小説ですが、坊っちゃんの中学校の月給は40円です。
坊っちゃんは、小説の最後で、街鉄(のちの都電)の技手になりますが、月給は25円でした。比較的高収入だったと言えますね。
戦前期における先祖が、どのような職業をしているのか分かったら、どのような暮らしぶりだったのかを、調べてみましょう。