襲名には、どんな意味があるのか?
襲名(しゅうめい)とは、親の名前を受け継ぐことをいいます。
祖父の名前を受け継ぐこともありますが、多くの場合、親の名前です。
家系図や古い戸籍を見ると、親と子どもの名前が同じになっている場合は多いです。
親子の名前が一緒というのは、現代人の感覚からすると、不便な感じもします。
しかし、歴史的に見ると、襲名とは大きな意味合いを持つものだったのです。
苗字の公称禁止と襲名
江戸時代において、苗字を公的に名乗ることは、武士や公家などの特権階級を除いては、認められませんでした。
苗字を名乗れないとすると、個人を区別するのが難しくなります。
実際に当時の人たちも、苗字を名乗れないのを不都合に感じていたらしく、屋号を用いたり、小字(こあざ)を併記したりすることで、区別できるような工夫をしていました。
屋号や小字については以下の記事を参考されてください。
屋号と先祖の名前の関係
小字の調べ方と、家系図作成との関係
現在であれば、親と子は同じ苗字を名乗ります。
同じ苗字を名乗ることで、親子だというのが他の人にも分かります。
しかし、江戸時代において、苗字を名乗れなかった。
苗字が名乗れないのなら、同じ名前を名乗ってしまおうということで、江戸時代は、世襲名が多かったのです。
襲名と隠居名
例えば、「七右衛門」という名前の人がいたとします。
彼の長男は、「利兵衛」と言います。
七右衛門が隠居すると、長男の「利兵衛」が「七右衛門」に改名します。
すると、隠居した七右衛門は、別の名前を名乗ります。
これを隠居名(いんきょめい)といいます。
仮に、隠居名として「七之助」と名乗ったとしましょう。
このように隠居名を名乗ることで、襲名が行なわれても、同じ名前の人が、二人出ないように工夫をするのです。
その後、2代目・七右衛門となった彼が、隠居すると「七之助」と名乗り、自分の子どもに、七右衛門の名を譲ります。
このような例が多く見られます。
先祖が襲名をしていると、家系を調べやすい
先祖代々同じ名前を名乗っていれば、近隣の人にも広く知れ渡っているので、個人を特定する上で、便利なのです。
また、先祖代々同じ名前を名乗っていることで、先祖を調べやすくなります。
襲名は、明治・大正・昭和戦前期においても一般的におこなわれていました。
現代でも、茶道家元や、歌舞伎・落語の世界などではありますね。
現代人から見れば、不可解に見えますが、襲名していることで、先祖を調べやすくなるので、これはこれで有難いことです。
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通字と襲名について