戦前の医師という職業
お医者さんといえば、高収入で社会的地位の高い職業として、一般的に知られております。
欧米など諸外国でも、こうした傾向は見られます。
専門性が高く、知的なイメージがありますね。
現在、お医者さんになるには、大学の医学部を出て、医師国家試験に合格しなければなりません。
特に国立大学の医学部ともなれば、相当な難関となっており、医者になるのは、そう簡単なことではないようです。
明治から昭和初期における、医師をとりまく事情
それでは、戦前のお医者さんについて、見て参りましょう。
戦前の日本においても、お医者さんは、社会的地位の高い職業でした。
江戸時代のお医者さんは、漢方医が中心でした。
現在とは異なり、無資格で開業できたようです。
ところが、明治の時代をむかえると、医者をとりまく環境も変わってきます。
近代医学制度の確立
明治7年(1874年)に「医制」が発布されて、近代の医学衛生制度が定められることになりました。
これによって、漢方医学が主流であった医学界に、西洋医学を本格的に導入されることになります。
漢方医たちのなかで、実力を認められたものは、そのまま医師の資格を与えられましたが、今後、新しく医師になるためには、西洋医学を学ばなければならないことになりました。
お医者さんになるための、三つのコース
明治時代において、医師になるには、複線的なコースがもうけられていました。
以下の三つのコースがあったのです。
・帝国大学医学部を卒業する
・医学専門学校を卒業する
・医術開業試験に合格する
帝大医学部や、医学専門学校を卒業すれば、無条件で、医師資格が得られたのです。
そして、これらの学校に経済的な理由で通えない者が、医術開業試験によって、医師資格を得ることができた、というわけです。
戦前の医師の構成と、その割合
大正時代には、約40000人の医師がいました。
その構成を見てみると、以下のようになっています。
・漢方医出身者 10000人
・帝国大学医学部出身者 3000人
・医学専門学校出身者 12000人
・医術開業試験合格者 15000人
時代が下るにつれ、帝大医学部や医学専門学校が各地に設立されます。
こうした学校によって、安定的に医師が輩出されるようになると、医術開業試験は役目を終えたということで、廃止されることになりました。
戦前期における医師という職業
戦前のお医者さんは、やはり一般庶民の家庭と比べると、高収入でした。
お医者さんのなかには、自営の開業医や、大病院に勤める勤務医のほかに、大学や専門学校の教授を務めるものや、軍医になるものもいました。
医師のご先祖様の家系調査は?
戦前のご先祖様に、お医者さんがいらしたということであれば、是非調査したいですね。
お医者さんであれば、公的な資料にお名前が見られるはずです。
医師の名簿を見れば、具体的にどういった地域で開業していたのかといったことが分かり、面白いと思います。
また、大学教授や軍医を務めていらしたのであれば、公務員ですから、多くの行政文書をあたれば、さらに充実した記録を見つけることができるでしょう。
ご先祖さまにお医者様がいらしたら、江戸時代のご先祖もお医者様でいらっしゃるケースは結構多いです。
戦前のご先祖様を糸口にして、さらに調査を進めて、先祖代々の立派な家系図を作ってみてはいかがでしょうか。