名工・豪商の称号としての受領名
受領名(ずりょうめい)とは、江戸時代に、御所・朝廷・寺院に出入りする商人や職人、芸能人たちに付与された称号のことです。
受領名を与えるのは、朝廷や公家、それから仁和寺・大覚寺・勧修寺といった門跡寺院でした。
金品を献上することで、その引き換えに称号を得ました。
受領名とは?
受領名は、国名を冠して、「大和介(やまとのすけ)」、「近江大掾(おうみだいじょう)」、「摂津小掾(せっつしょうじょう)」というような称号です。
国名を冠しているものの、実際には、そうした国を治めているわけでも、住んでいるわけでもありません。
形式的に、名乗っているだけです。
特に、山城・近江・大和・和泉・河内・摂津といった京都に近い国名を冠したものが、好まれたといいます。
武家官位から変化したもの
もともとこうした官位は、武家に与えられた称号でしたが、受領名に関しては、職人や商人、芸能人などに与えられました。
特に、和菓子商人に与えられることが多かったようです。
例えば、羊羹で有名な「虎屋」は、近江大掾(おうみだいじょう)を拝領しています。
職人や商人に好まれた受領名
受領名を授かることは、大変名誉なことであり、これを名乗ることで、家業に箔をつけることができました。
受領名を与えられた職人や商人の供する商品には、ブランドとしての付加価値がつきます。
それによって、高いブランド価値を、広く世間に認められるわけです。
受領名を授かることは、名声を得るとともに、商売繁盛にもつながるという実利的なものでもあったのです。
現在でも、「宮内庁御用達」とか「皇室御用達」といった言葉に、名誉的な意味合いが込められているのと、同様のことが言えると思います。
また、受領名を名乗るものには、自称するものも多かったといいます。
明治2年(1869年)に、受領名の授受を廃止し、さらに受領名を受けた者には、その使用を停止する布告がなされました。
これによって、受領名の歴史は、幕を閉じることになります。
もしも、先祖から受け継がれた家系図に、「○○介」といったような武家官位の記載があった場合、それが受領名ではないのかということも、考慮に入れる必要があると思います。